浴槽にポンッと浮かべるだけで、湯アカの原因のひとつ・皮脂を吸着する〈アカパックン〉。
残り湯をキレイに保てるうえ再利用にも役立つお手入れアイテムですが、開発当時の目的は別のところにあったとか。
今回は〈アカパックン〉の生みの親、恵川商事株式会社の安藤孝平代表取締役社長に意外な開発エピソードや"売れるまで"の道のり、おすすめの使い方などをじっくりうかがいました。
エコ目的ではなかった?売れないピンチを乗り越えて
―本日は名古屋市に本社を構える恵川商事株式会社さんとリモートでつないでおります。代表取締役社長を務める安藤孝平さん、よろしくお願いします。
安藤さん:よろしくお願いします。〈アカパックン〉の開発からお取り引きの交渉、店頭の実演販売まであらゆることをこなしてきました。なんでも聞いてください!
恵川商事株式会社の安藤孝平代表取締役社長
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―発売は2005年ですね。国内累計販売数400万個を突破(※)した、ハンズでもかなりのロングセラーアイテムです。が、念のため。〈アカパックン〉の簡単なご説明をお願いします。
安藤さん:〈アカパックン〉は浴槽の湯アカの原因のひとつ・皮脂を吸着し、お湯の汚れを軽減するお手入れアイテムです。
恵川商事 アカパックン 左から
お風呂用 グリーン 1,320円(税込)
洗濯機用 ピンク 1,320円(税込)
スーパーアカパックン+Ag 2,420円(税込)
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安藤さん:使い方はカンタンで、お湯を張った浴槽にポンっと浮かべていただくだけ。汚れが減れば張り替える回数も減らせるので、節水・節約につながります。お財布にも環境にもやさしいです。
〈アカパックン〉開発のきっかけ
―もともとエコの考えありきで開発されたんですか?
安藤さん:それがちょっと違いまして。いまから20年ほど前ですね、高齢者の方が浴槽の掃除中に滑ってケガをするというニュースが頻繁に報道されていたんです。
―転倒事故ですね。
安藤さん:なかには亡くなられた方もいて。そんなニュースを見聞きするたびに、事故を予防するにはどうしたらよいか。そもそも原因とは?と考えるようになったんです。調べるうちに、浴槽の表面についた"ヌルヌル"が転倒を引き起こしていること、その正体は湯アカで、湯アカの原因となっているもののひとつが入浴中の身体から流れ出る皮脂だと知ったんですね。
―皮脂ということは、油分?
安藤さん:そうです。そこで、浴槽の表面に付着したこの油分を減らすことが転倒事故の防止に役立つのではないかと考えました。エコファーストではなく、事故防止、あくまで人の身体ファーストだったんですよ。
―なるほど。それでも、いまやエコの文脈で語られることが多いアイテムです。約20年前なら一般家庭のエコの意識も高まっていた時代かと思いますが、発売当時の反響はいかがでした?
安藤さん:結論からいうと、まったく売れませんでした。本当に、まったく(笑)。
―え!ここまでのお話をうかがうと、すごく画期的なアイテムなのに。
安藤さん:当時は意識は高まっていても、「エコ関連アイテムにお金を払って活用する」という習慣化のフェーズには辿り着いていなかったように感じます。実際「洗剤を使った掃除でこと足りる」というお客様のお声もありましたし。あとは・・・この見た目で「皮脂をスゴく吸着します。お湯の汚れを減らせるんです!」といっても、説得力に欠けたのかなと(笑)。

―カワイイですからね。
安藤さん:そこで、ハンズさんをはじめとする売り場で実演販売をさせていただいて、お客様の目の前でお湯がどうキレイになるのかをご説明し続けました。
―実際に見ていただくと引きがありそうです。
安藤さん:そうですね。かなり関心を持っていただけました。ただ、それだけでは黒字にならなかった。いまだからお話できますが、専任の税理士も深刻な顔をしていて、夢にまで在庫の山が出てきたという(笑)。
売れなくても、やめなかった理由
―それでも継続されたと。
安藤さん:ハンズさんの店頭に立ち寄った時、〈アカパックン〉をつくるスタッフが陳列を整えているところを見かけたんですね。彼らは、自分たちがつくったものがどう並べられていて、お客様にどう手に取っていただいているのかを自主的に見に来ていたんです。その姿に、胸を打たれて。
―いいスタッフさんに恵まれていたんですね。
安藤さん:彼らのためにも、〈アカパックン〉を置いてくださる店舗さんのためにも、ここで立ち止まっちゃダメだと。できることは何でもしようと決めました。そして転機が訪れたのが2008年。「G8北海道洞爺湖サミット2008」です。
―主要国首脳会議ですね。突然、規模感がスゴい。
安藤さん:取り上げる主要テーマのひとつが環境問題ということで、出品のお声がけをいただいたんです。もちろん喜んでお応えしました。すると翌日からたくさんのお問い合せをいただいて。テレビ番組にも出演させていただきました。
―露出が増え、知名度がぐっと上がったんですね。
安藤さん:おかげさまで売上も大きく伸びました。ただそれは〈アカパックン〉に限らず、さまざまなエコアイテムに通ずる話だったと思います。エコはもはやブームではなく、スタンダードになったなと。社会の変化をはっきり実感しましたね。
―もともと高齢者の転倒事故防止のために開発された〈アカパックン〉が、時代を象徴する1つのアイテムになった。嬉しい予想外に、なんだか感動します。
【お風呂用】〈アカパックン〉の素材と仕組み
―ここからは具体的に、〈アカパックン〉の素材と仕組みについて教えてください。
安藤さん:〈アカパックン〉と一口にいっても、お風呂用のほか洗濯機用、虫除け用などもあるのですが、まずはお風呂用からお話ししますね。
安藤さん:〈アカパックン〉はほぼ繊維でできています。皮脂を吸着するのは中材のポリプロピレンという繊維。あまり耳なじみがないと思いますが、原油タンカーの座礁事故で海に油が流れてしまった時、油を回収するために活用される素材です。
―この白いフワフワが...?
安藤さん:はい。〈アカパックン〉の場合は、お湯に流れ出た皮脂が浴槽につく前に吸着します。イメージをお見せしますね。浮かんでいる緑の液体が油(皮脂)でして・・・
―キレイにたべた!!
安藤さん:その名の通り、アカをパックン!です。薬品は一切不使用。ポリプロピレンのチカラで油を吸着します。
―1個で何回分使えるんですか?
安藤さん:約200回です。
―1日1回だとしたら半年以上ですね。
安藤さん:約400回分もありますよ。〈スーパーアカパックン+Ag〉です。ご家族や同居されている方の数が5人以上の場合におすすめです。
―約400回。緑の〈アカパックン〉と具体的にどう違うんですか?
安藤さん:緑の〈アカパックン〉の中材はポリプロピレンですが、〈スーパーアカパックン+Ag〉には撥水性ナノファイバーポリプロピレンを採用。約1.7倍の油分吸着力を誇ります。

―倍ほど日持ちするので、詰め込まれている量も倍かと思いました。
安藤さん:使いやすいサイズ感は変えたくなかったので、撥水性ナノファイバーポリプロピレンに特殊加工を施しました。繊維がさらに細かくなって密度が高まり、吸着力アップにつながるんです。銀糸・ミューファン®も使用しているので、硫化・酸化・塩化による黒ずみを解消し、よりキレイな浴槽を保ちます。抗菌効果もバツグンです。
―細かい工夫がたくさんですね。ちなみに、安藤さんは普段どのように使われていますか?
安藤さん:入浴前か入浴後、浴槽に浮かんでいる〈アカパックン〉に向かってシャワーを当ててお湯を回します。水流があると皮脂をより効率的に吸着させられるんです。
―なるほど。では、お手入れはどのように?
安藤さん:特別なお手入れ方法はなく、浴槽に浮かんでいる状態であればそのまま放置していただいて大丈夫です。もし気になる時は、軽く絞って通気性のよい日陰に干していただけると。洗濯・脱水していただいても問題ありませんが、手洗いだと中材を洗いすぎて吸着力が落ちる可能性があるのでご注意を。
―本当にカンタンですね。
安藤さん:もともと人を想ってのアイテムですからね。お手入れにかかる手間やストレスもゼロを目指しました。
【洗濯用】〈アカパックン〉もある!
安藤さん:お洗濯用の〈アカパックン〉もご紹介いたします。
―洗濯機の中に入れるものですか?
安藤さん:その通り。お洗濯中に衣類から剥がれた皮脂は、皮脂が残っている部分に再び付着する特性を持ちます。とくに襟首、袖口などがイメージしていただきやすいポイントですね。
―そんな特性があるとは。
安藤さん:この再付着が、通常の洗濯では落ちにくい黒ずみや黄ばみ、さらには嫌なニオイの原因のひとつになるんですね。ならば、お洗濯中に剥がれた皮脂そのものを吸着してしまおうと。
―服の汚れやニオイのもとを落とせるのは洗濯洗剤だけかと思ってました。これはどう使うんですか?
安藤さん:洗濯機に入れていただき、いつもと同じように洗濯していただければOKです。我が家の使用シーンをどうぞ。
―洗剤と一緒に入れちゃって大丈夫なんですね!
安藤さん:もちろん。柔軟剤、漂白剤と一緒に入れていただいても問題ありません。脱水もかけていただけます。
―皮脂がどれくらいつかないものか、気になるところです。
安藤さん:実験の結果をお見せしましょう。ピンクの成分が油(皮脂)です。むかって左が〈アカパックン〉あり、右がなしで洗った綿ハンカチでして・・・。

―〈アカパックン〉を使って洗濯した綿ハンカチ、ほぼ真っ白ですね!
安藤さん:水中の油を吸着し、付着を防ぎ、キレイな綿ハンカチのまま洗い上げられました。もちろん、洗濯槽もキレイに保ちますよ。
―というと?
安藤さん:皮脂はカビが繁殖する原因のひとつ。水中の皮脂が付着して残ったままの洗濯槽にはカビが生えやすくなるんです。その原因をもとから断つイメージですね。
―目からウロコです。これも同じく中材はポリプロピレンですか?
安藤さん:そうです。お風呂の〈アカパックン〉の仕組みを応用しています。同じく約200回お使いいただけますし、特別なお手入れも不要。
―もし気になったら水気を絞って日陰に干す。ですね。
安藤さん:洗濯ネットに入れた状態であれば、洗濯機で洗っていただいても問題ありません。その際は乾燥機やドライヤーなど、高温のもので乾かさないようご注意くださいね。
人を想うことは、スタッフ想うこと。「働きやすい環境」づくり
―お話をうかがって改めて感じるのは、〈アカパックン〉の貢献度の高さ...なんですが、つくり自体はすごくシンプルですよね。
安藤さん:そうですね。素材はほぼ繊維ですし、すごく難しい裁縫が求められるわけでもありません。ちなみに、表側は靴下と同じ素材とつくりを採用しているんですよ。
―靴下...いわれてみれば、口ばし(?)部分は靴下のかかと部分と同じですね。でも、なぜ靴下?
安藤さん:弊社は創業から65 年以上かけ、さまざまな分野のお客様とお取り引きしてまいりました。靴下にまつわる業者さんもそのなかにいらっしゃって。いざ〈アカパックン〉をつくろうとなった時、たくさんの知恵とアイデアを授けてくださったんです。
―お客様とのつながりありきだったんですね。
安藤さん:中材の特殊加工もそうですね。もともと独自技術なんて持ち合わせていませんでしたから、その分野に長けたお客様に多大なるご協力をいただきました。多くの方に助けられてここに来た、と感じます。
―そうそう!〈アカパックン〉は"ひとつずつ手づくり"と聞いたことがあります。
安藤さん:これにもちゃんと必然性がありまして。〈アカパックン〉開発後、しばらくは専用工場を持っていなかったんですよ。そこで、手作業を請け負ってくれる外注先を探していたんです。その時に地域の授産所に一括依頼するのはどうだろうという案が出まして。
―地域とのつながりに着眼されたと。
安藤さん:雇用機会の創出にもつながりますからね。早速候補先を訪ね、つくり方を説明したんですけど...実際の作業を見ていると、皆さん苦しそうな表情で、すごくやりづらそうだったんですよ。自分としては地域の社会貢献をしているつもりが、「いや。これは本当に貢献なのか?」と考え直すようになって。「もっと負担がかからない、もっとシンプルな方法を」と追求したんです。
―つくり方自体を変えてきたんですね。
安藤さん:最後に中材を包んで完成。は変わりませんが、中材の加工方法だったり、詰め込み方だったり、要所要所を少しずつ改善してきました。すると以前のような苦しそうな表情が減って、生産スピードが上がって、現場が活気づいたんです。そう、先ほどお話した「ハンズの売り場で陳列を整えていた」のがまさに彼らです。
―胸を打たれます。
安藤さん:この"つくりやすさ"が強みになって、いまでは女性や高齢者といった力仕事に自信がない方々にも関心を持っていただけるようになりました。

安藤さん:スタッフ全員、本当に仕事が細やかです。一人ひとり愛情を込めてつくり続けてくれているなぁと。作業場の空気も明るいですし、集中力もあって心強さと安心感を覚えます。その自信が〈アカパックン〉を手に取ってくださるお客様にも伝わるとよいな、と思います。
―スタッフを想う安藤さんのお人柄もひしひし伝わってきます。
安藤さん:私たちの企業理念は「笑顔創続(えがおそうぞく)」。商品や働く環境を通して世の中に笑顔を創り続けたいんです。それは、お客様も、スタッフもそう。すべての人々です。
―非常に説得力があるお言葉。最後に、読者の皆さまに改めてメッセージをお願いします。
安藤さん:いろいろお話しましたが、まず何よりお風呂掃除は本当に大変なので、この機会にぜひ〈アカパックン〉をお試しいただき、少しでも楽になっていただければと思います。お洗濯用や虫除け用、消臭用のほか、これからも新しい〈アカパックン〉をどんどんつくってまいりますので、ぜひご期待ください!
おわりに
さまざまな工夫とたくさんの愛情が詰まった〈アカパックン〉。一家に1個あるだけで毎日の生活にポジティブな流れが生まれそうですね。この機会にぜひ手に取ってみてください。
※2025年2月時点(恵川商事株式会社調べ)
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